古今和歌集の特徴はズバリ!
読み手の遊び心や、気持ちを表現するのを支える様々な技巧
じゃあ、「技巧」って何?って言うと、みなさんがご存じの通りの「掛詞」や「縁語」であったり、「序詞」や「枕詞」であったりする。序詞や枕詞は導く語や関連する言葉を覚えながら、対応させていけば掴めていけると思う。よって今回は、古今和歌集の特徴を「掛詞」と「縁語」と定義して、特徴が顕著にみられる和歌を実際に紹介していこう。
縁語や掛詞の多用が大きな特徴ですね
古今和歌集の概要
平安前期、最初の勅撰和歌集。20巻。歌数約1100首。
905年醍醐天皇の命を受けて紀友則、紀貫之、 凡河内躬恒 、壬生忠岑が撰者となって編纂している。
主な歌人として、4人の撰者や、遍照、在原業平、六歌仙などが代表的
覚えておいたほうがいいのはこの辺くらいかなぁと思います。
主な歌人を紹介しましたが、詠み人知らずが多いです。
12個厳選!古今和歌集らしい和歌たち
⓪(首目) 詞書 作者 古今和歌集番号
和歌
なぜ古今和歌集らしいかの理由
①雪の降りけるをよめる 紀貫之 九
霞立ち 木の芽もはるの 雪降れば 花なき里も 花ぞ散りける
理由:「はる」を掛詞として、木の芽が「張る=ふくらむ」と「春」を掛けているため。また、雪を花に見立てることで、「花なき里も花ぞ散りける」という表現が輝いている。
②春のとくすぐるをよめる 凡河内躬恒 一二七
梓弓 春たちしより 年月の いるがごとくも 思ほゆるかな
理由:「はる」を掛詞として、弓に弦を「張る」と「春」を掛けているため。また、同時に「梓弓」と「いる=射る」が縁語となっているため。さらに、漢詩の光陰矢の如しを模倣していると思われ、様々な技巧が見つけられる和歌である。
③冬のうたとてよめる 源宗于 三一五
山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も 枯れぬと思えば
理由:「かる」を掛詞として、草木が「枯れる」と「離る=人の訪れがなくなる」を掛けているため。どちらも冷たい・寂しいというイメージの表現であるため、冬の山里の侘しい様子が掛けることで、より一層伝わってくる。
④題知らず 在原行平 三六五
立ち別れ いなばの山の 峰におふる 松とし聞かば 今かへりこむ
理由:「いなば」、「まつ」を掛詞として、「因幡」と「往なば」、「松」と「待つ」を掛けているため。これから、行きたくない因幡に行かなくてはならず、家族か友人などと離別する様子が伝わってくる
⑤東の方へ友とする人ひとりふたりいざなひていきけり、みかはの国八橋といふ所にいたりけるに、その川のほとりにかきつばたいとおもしろく咲きけりけるを見て、木のかげにおりゐて、かきつばたといふ五文字を句のかしらにすゑて旅の心をよまむとてよめる 在原の業平 四一〇
唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
理由:「なれにし」、「つま」、「はるばる」、「き」を掛詞として、「着慣れる」と「馴れ親しむ」、「妻」と「褄」、「遥々」と「張る」、「着」と「来」を掛けているため。また、全体が唐衣の縁語として統一されているため。掛詞・縁語を多用した最も古今和歌集らしい和歌といえる。
⑥題知らず 素性法師 四七〇
音にのみ きくの白露 夜はおきて 昼は思ひに あへずけぬべし
理由:「きく」、「おく」、「ひ」を掛詞として、「聞く」と「菊」、「置く」と「起く」、「思ひ」と「日」を掛けているため。また、白露を軸として、「白菊の露」や露を消す太陽の「日」を連想させているところには驚かさせる。
⑦題知らず 凡河内躬恒 六八六
枯れはてむ のちをば知らで 夏草の 深くも人の 思ほゆるかな
理由:「かる」を掛詞として、草木が「枯れる」と「離る=人の訪れがなくなる」を掛けているため。また、「枯れる」と「夏草」が縁語となっているため。また、「離れ」という表現から、 凡河内躬恒 が女性の視点になって詠んでいることも特徴的な和歌である
⑧題知らず 紀友則 七五三
雲もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ
理由:「いとはれて」を掛詞として、嫌われての意味である「厭われて」と晴天ではる「いと晴れて」を掛けているため。また、「世」を「夜」として捉えれば、前半の朝との対比表現となり、そのための後半の「へぬらむ(経ぬらむ)」というときの流れの表現がより発揮されると考える。
⑨題知らず 兼芸法師 八〇三
秋の田の いねてふことも かけなくに 何を憂しとか 人のかるらむ
理由:「かる」、「かけ」、「いね」を掛詞として、「掛け」と「架け」、「刈る」と「離る」、「稲」と「往ね」を掛けている。また、「秋の田」と、「稲」、「刈る」が縁語となっているため。
⑩文屋の康秀みかはのぞうになりて、あがた見にはえいでたたじや、といひやれりける返事によめる 小野小町 九三八
わびぬれば 身を浮き草の 根を絶えて さそふ水あらば いなむとぞ思ふ
理由:「うき」を掛詞として、「浮き」と「憂き」を掛けているため。また、詞書の「三河」の「河」の部分に合わせた返しとして、当意即妙といえる小野小町の秀逸な和歌である。
⑪題知らず 詠み人知らず 九九四
風吹けば 沖つ白浪 たつた山 夜半にや君が ひとりこゆらむ
理由:「たつ」を掛詞として、波が「立つ」と「竜田山」を掛けているため。また、リズム感を意識して詠んだのか、「あ」を母音とする音が多い印象を受け、口に出して心地が良い和歌だと思う。
⑫家を売りてよめる 伊勢 九九〇
飛鳥川 淵にもあらぬ 我が宿も 瀬にかはりゆく ものにぞありける
理由:「せ(ん)」を掛詞として、「瀬」と「銭」を掛けているため。また、流路が変わりやすく、平安時代以降は無常のたとえとして用いられることが多くなった「飛鳥川」を、古今集の和歌を踏まえて、浮世の移り変わりとして使用した秀逸な和歌といえる。
おすすめの本紹介
古今和歌集を学ぶのに最適な本をいくつか紹介します。参考になれば幸いです
①簡単に全体を把握しておきたい人へ
②詳細に1首1首知りたい人へ
ということで、今回は古今和歌集の特徴について解説しました。掛詞や縁語が多用されている和歌が非常に多かったということがわかりますね。
誤りがあればコメント指摘していただけると幸いです。修正します。また、他に扱ってほしいテーマなどもあればコメントしていただけると幸いです。
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