今回の記事では、4大工業的製法の1つ「接触法」について解説します。無機化学の分野において4大工業的製法の理解は必須であり、出題率も高いです。ここでマスターしましょう!
この記事を読んで以下のことを理解できればOKです↓↓
・接触法の反応式3ステップが全て書ける
・硫黄Sが1molあれば、硫酸H₂SO₄が1molできる
現段階では、理解できなくて大丈夫です。さっそく解説していきましょう!
接触法の反応式3ステップ
まずは結論。書けなくてはいけない接触法のステップはこれです↓↓
4大工業製法の中では最も単純でわかりやすい反応ステップです。酸素の数が綺麗に増加(SO₂→SO₃→SO₄)しているので覚えやすいかと思います。
4大工業製法全てに共通することですが、反応式を書けることは最低条件です。
触媒として使われるV₂O₅について大事なことはこれ↓↓
接触法において触媒を使う場所は第2ステップの2SO₂+O₂→2SO₃(触媒:V₂O₅)
上で教えた接触法の反応式3ステップを見てみてください↓
①S+O₂→SO₂
②2SO₂+O₂→2SO₃(触媒:V₂O₅)
③SO₃+H₂O→H₂SO₄
ここでわかるように、触媒については②のステップでしか書かれていません。つまり、接触法で使う触媒はV₂O₅・酸化バナジウム(v)であることは決して間違えではないが、接触法の全ての過程で触媒のV₂O₅・酸化バナジウム(v)を使うは間違いということです。
受験生全員が「接触法の反応式3ステップ」と「触媒は酸化バナジウム(v)」って知っています。
そこに虚をつくように、このような問題が出題されることが稀にあります↓↓
接触法の触媒が酸化バナジウム(v)しか知らない人は、どのステップのみで触媒を利用するかわかりません。迷いが生じています。そうならないためにも、触媒を使用する場所は第2ステップと覚えておきましょう!覚えているだけで得する日がきっと来ます。
【超重要】硫黄Sが1molあれば、硫酸H₂SO₄が1molできる
接触法の中で一番重要な性質がこれです↓↓
まずはなぜこのような性質を持っているかを反応式3ステップから確認しましょう
接触法の反応式3ステップそれぞれの反応式の係数に着目してください
①1S+O₂→1SO₂(Sが1molで、SO₂が1molできる)
②2SO₂+O₂→2SO₃(SO₂が2molで、SO₃が2molできる)
※2molで2molできるのだから、1molで1molできる。
③1SO₃+H₂O→1H₂SO₄ (SO₃が1molで、H₂SO₄が1molできる )
どのステップの反応式であっても、材料が1molで、完成品は1molできています
ということは、最初の材料Sが1molあれば、最終完成品H₂SO₄は1molできるはずです。
ごくごく当たり前の比の考えですよね。せっかくだからこの性質を活用しましょう
最初の硫黄Sのmolさえ求めれれば、求めたい最後のH₂SO₄のmolを計算できる
⇒①の完成品(SO₂)、②の式全て、③の材料(SO₃)のモル計算は省略できる
最初と最後だけで答えが出る=途中の計算を大幅ショートカットできるということですので、わざわざ自分で進んで計算量を増やすことはありません。その分、計算ミスも解くのにかかる時間が増えます。接触法に限らず、理系に進んだが、数学苦手な我々は、化学になるべく数学(計算)を持ち込まない手を全力で考えましょう。
【例外】ちょっと難しい接触法
上までの説明で基本的な接触法についての理解は充分にできます。しかし、接触法にも例外があります。紹介しないで閉めるのは良くないので一応。
まずは結論。なぜ例外が出るのか、その例外はなにか↓↓
昔は、大規模工場も現在のような最先端合成(分離)装置もないので、自然の物質からどうにかして作らなくてはいけません。そこで、基本的な接触法の①のS+O₂→SO₂の難易度が爆発的に上昇します。自然界に硫黄Sが単体のまま存在することはかなり難しいんです。ほとんどの硫黄は硫化物として存在しています。
そこで、昔の人は、硫化鉄FeS₂(黄鉄鉱)を使って接触法を行うと決めました
硫化鉄(黄鉄鉱)を使うということは①のステップが大幅に変わります。新たなステップはこれです↓↓
②、③は変わらず、①だけけっこう変わります。ここで、超重要な性質(硫黄Sが1molあれば、硫酸H₂SO₄が1molできる)が成立するかを検討する必要があります。
①4FeS₂+11O₂→2Fe₂O₃+8SO₂
(FeS₂が4molで、SO₂が8molできる)
⇒(FeS₂が1molで、SO₂が2molできる)に変わってしまいました
つまり、最初の材料Sが1molあったら、最終完成品H₂SO₄は1molできる超重要性質は使うことができません。超重要性質は、最初の材料Sが1molあったら、最終完成品H₂SO₄は2molできるというルールに変えなきゃいけません。
これだけは入試問題を開いてから①の反応式がどっちかを見て判断しましょう。
②、③のステップに変化がないことが幸いで、要するに超重要性質にルール変更があったというだけです。つまり、簡単式だと1mol→1mol,複雑式だと1mol→2molって覚えておけばいいのです。
知っているだけで、反応式も実質書かなくても完成品(H₂SO₄)の計算ができます。
他の4大工業的製法はこちらから確認してください↓↓
・オストワルト法の反応・まとめ式の覚え方(白金、硝酸、アンモニア)
・アンモニアソーダ法の目的(炭酸ナトリウム)・順番・覚え方とは?
・【高校化学】ハーバーボッシュ法(鉄系触媒×高温×高圧)を解説!
以上です。あなたの化学がより理解できるものなると願って…
誤りがあれば、コメント指摘していただけると幸いです。修正します。
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